2011年12月31日土曜日

5枚のお皿

今年最後の窯出しのうちの注文品のお皿。
結婚記念日に5枚のお皿をという注文をいただき、
私の定番の染付(・・・白地に呉須(ごす)という青の絵の具で絵を付けた焼き物のことを
染付(そめつけ)といいます。)で直径19㎝くらいのお皿を作らせていただきました。

注文してくださったお客様はもしかしたら、もう10年来のお客様でしょうか。
初めてお会いした頃、陶芸教室にも参加していただき、お皿を作られました。
お一人目の赤ちゃんがおなかにいらして、あと1週間後が予定日とおっしゃる時で
その赤ちゃんのためにお皿を作るのとおっしゃって、旦那さまと一緒に作って
いらっしゃる姿がとても可愛くてかわいくて。
その時の窓から入る光や、真剣につくっているお二人の横顔は本当にすてきで
胸がきゅんとなりました。


お二人はときどき喧嘩もしますよ~っておっしゃっていますが、なにより
好きなひとがそこに居るって、それだけで本当に素敵ですね。
私の作った5枚のお皿は、すでにとても可愛がっていただいているみたいです。
ありがとうございます。

The Shirelles「Will You Still Love Me Tomorrow」を聴きながら、
来年が皆さんにとってしあわせな一年でありますようにと、心から願っています。




2011年12月22日木曜日

ティーカップ

こんにちは。
クリスマスも近付いてきてそれに合わせてくれるかのように週末は雪が降るそう。
どうぞ皆さんも寒くないようにして、楽しい時間をお過ごしくださいね。

とても昔の話になって恐縮ですが、私が初めて就職したのは福岡県久留米市にある器のお店でした。
日本の器はもちろん、海外の有名メーカーの食器やガラス製品など欲しくなるような素敵なものが
並んでいて、掃除をしながらうっとりしてばかりでした。
そこの販売員として私含め3名の新入社員は、社長夫妻にあれやこれや叱られながらも楽しく働いてました。
私たちはお店にみえるお客さまのことや先輩のこと、配達にくる郵便局員さんが
かっこいいとかそんな話ばかりしてましたっけ。


その郵便配達の人はとても渋くて素敵で、根津甚八さんみたいなかんじ。
その方がある時、私服姿でお店にお見えになりました。
そして私も大好きなウェッジウッド社のワイルドストロベリーという柄のティーカップを二つ
指差してプレゼントしたいので包んでくださいとおっしゃるのです。
当時は円高でもない時代です。私たちにとってはとても高価な素敵なティーカップ、
その方は「このカップが好きだと言ってたので、妻に。」とちょっと照れながら包装するのを
待っていらっしゃいました。

私達小娘がその時、「妻になりたい。」と思ったのは言うまでもありませんね。
そう、それはクリスマスのプレゼントでした。
それからずっと私はますますワイルドストロベリーが大好きです。
クリスマスにティーカップのプレゼント、とても可愛くていいセレクトだと思いませんか。

今日は外からこの文章を書いてるので、写真のアップの仕方がわからず、写真がなくてごめんなさい。
百貨店のティーカップコーナーでいろいろ眺めてみるのもとってもたのしいですよ。

2011年12月16日金曜日

陶芸家・河井寛次郎さん

ちょうど一年前くらいの冬、今日のように雪降る寒い日に京都へ行った日のことを
思い出しています。


学生の頃に行った、三十三間堂に寄ってみました。人も少なく、ゆっくりと
観音さまとお話できた気分になりました。
ガイドブックを見ていると、その近くの歩いて行けるくらいのところに
私が最も尊敬する陶芸家・河井寛次郎さんの生前の自邸と工房が公開されて
いると書いてあります。
ドキドキしながら訪ねてみました。

開いているのかなと思うほど静かな雰囲気で、小さな引き戸を入るとそこはもう
河井さんの精神が今も息づいているような端正な室内でした。
派手な調度品やきらびやかなものは何もなく、清廉で穏やかなものが静かに
存在していました。

仕事をしていらしたという中庭や窯の周り、そして版画家の棟方志功さんや
イギリスの陶芸家、バーナード・リーチさんが河井さんを心から慕っていらして
いつも話をしに訪れていたという居間や茶室の様子は
本当に胸を打つ率直な美しさでした。
家の無垢の板張りの外壁は、長い年月の雨風にさらされて浸食された木目が
とても美しく、心を奪われました。

なにか真実というものがそこかしこにあふれていて、質実剛健とは
こういうことなんだと身が引き締まる思いでした。



今はお孫さんにあたられる女性の方が、学芸員としてその場所を見守って
いらっしゃるそうです。
もしも京都に寄られる時には是非訪れてみてください。
日本の精神を感じることができると思います。
もちろん、河井さんの陶芸の作品も多く展示されています。

室内に飾ってあった河井さんの直筆の言葉の中で、
時々思い出して自分に言う言葉があります。

「新しい自分が見たいのだ 仕事する。I want to see a new self. I work.


ここで素焼きをされていたという窯。まるで生きているようです。
とても愛らしかったのでちょっと離れがたく、横に置いてある椅子に座って
窯の番をしていらしたんだなぁと思って感激したことを今もはっきり覚えています。





2011年12月10日土曜日

親友

ある日のことです。お昼ごはんに呼ばれて、カレーライスをご馳走になりました。
私の器を使っていただいて食卓に並べてくださるお食事は、本当に感動的です。
こんなふうに普段も使っていただいてるんだなと思うととても嬉しくなります。


こちらのお家のかたはお客様でもあるのですが、なんというか初対面の時から
初めて会った気がしない不思議なご縁を感じる方で、夢中になって
お互い時間が経つのも忘れるほどたくさんお話しをしました。
私の工房にお見えになったその時のことを、家に帰られてから娘さんに話されたそうです。
その娘さんは小学6年生。実はもう何か月も学校へ行っていませんでした。
もちろん母親である彼女はとても悩んではいらっしゃいましたが、
娘さんの心の奥底にある何か毅然としたものをうっすらと感じてもいらっしゃる様子でした。

それから少ししてその娘さんが「しおりさんのところに一緒に行きたい」と言ってると
聞かされました。今まで大人の誰にも自分から会いたいと言ったことがないので、
良かったら会ってほしいと。
私が会ってなにかできることなんてあるのかなぁと思いましたが、会ってみたい
気持ちもあって工房に招待しました。

とっても賢そうなすてきな女の子、第一印象です。私はすぐに彼女を好きになって、
歳は離れているけどずっと友達でいたいと思いました。
そしてとりとめもなく色々と話をして、私が彼女に伝えた気持ちはこんな感じだったと
記憶しています。「友達として、何があってもずっとあなたを応援するよ。」って。


その何か月かあと、彼女は自分で行きたい学校を決めて、そこに通うことになりました。
離れたところなのでなかなか会えなくてさみしいけれど、彼女の決断を私もご家族と
一緒に見守り応援していきたいと思っています。
いえ、実は反対に私たち大人のほうが見守られているのかもしれません。

その彼女が、私のためにお母さんと一緒にお昼ご飯の食卓の準備をしてくれて
素敵におもてなししてくれた時間、大切な私の宝物です。


今日はまん丸い月(明日は満月だそう)、彼女を思って今日はこの曲を聴いています。
Sixpence None The Richer 「Kiss Me」 



2011年12月2日金曜日

うれしい注文

取っ手のないカップ。取っ手のあるカップ。
どちらも好きですが今日は取っ手のないカップで、コーヒーをいただいています。

自分がパッとひらめいて作る作品もあれば、お客様からこんなものを使いたいと
リクエストをいただいてつくるものもあります。

今日のカップは、とある病院の先生から、開院25周年にお世話になった皆さんに配りたいと
注文をいただき、一緒にデザインや色を考えて作った器です。
きっと長い年月のなかに、たくさんのスタッフの方との思い出や病院にいらした患者さんとの
心あたたまる想い出がおありのご様子で、
私も胸の中でそっと感動しながら嬉しく注文を受けた日を思い出しました。

出来上がるのにだいぶ時間がかかってしまって、とても申し訳なかったのですが 
お渡しした時の優しい先生の笑顔に「作らせていただいてよかった。」と本当に感謝の気持ちで
いっぱいになりました。


私も同じカップを持っているので、コーヒー豆をガリガリ挽いておいしいコーヒーで
おいしい時間を過ごしています。Stan Getz & Astrud Gilbert 「Corcovado」を聴きながら
至福のひとときです。。。