2011年12月16日金曜日

陶芸家・河井寛次郎さん

ちょうど一年前くらいの冬、今日のように雪降る寒い日に京都へ行った日のことを
思い出しています。


学生の頃に行った、三十三間堂に寄ってみました。人も少なく、ゆっくりと
観音さまとお話できた気分になりました。
ガイドブックを見ていると、その近くの歩いて行けるくらいのところに
私が最も尊敬する陶芸家・河井寛次郎さんの生前の自邸と工房が公開されて
いると書いてあります。
ドキドキしながら訪ねてみました。

開いているのかなと思うほど静かな雰囲気で、小さな引き戸を入るとそこはもう
河井さんの精神が今も息づいているような端正な室内でした。
派手な調度品やきらびやかなものは何もなく、清廉で穏やかなものが静かに
存在していました。

仕事をしていらしたという中庭や窯の周り、そして版画家の棟方志功さんや
イギリスの陶芸家、バーナード・リーチさんが河井さんを心から慕っていらして
いつも話をしに訪れていたという居間や茶室の様子は
本当に胸を打つ率直な美しさでした。
家の無垢の板張りの外壁は、長い年月の雨風にさらされて浸食された木目が
とても美しく、心を奪われました。

なにか真実というものがそこかしこにあふれていて、質実剛健とは
こういうことなんだと身が引き締まる思いでした。



今はお孫さんにあたられる女性の方が、学芸員としてその場所を見守って
いらっしゃるそうです。
もしも京都に寄られる時には是非訪れてみてください。
日本の精神を感じることができると思います。
もちろん、河井さんの陶芸の作品も多く展示されています。

室内に飾ってあった河井さんの直筆の言葉の中で、
時々思い出して自分に言う言葉があります。

「新しい自分が見たいのだ 仕事する。I want to see a new self. I work.


ここで素焼きをされていたという窯。まるで生きているようです。
とても愛らしかったのでちょっと離れがたく、横に置いてある椅子に座って
窯の番をしていらしたんだなぁと思って感激したことを今もはっきり覚えています。





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